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このブログでは、自作小説の創作話や自作イラストの公開をしています(^_-)-☆
*初めてのケータイ電話*
「おー、マジで?! スッゲー、良いのこれ、本当にいいの」
高橋空は、自宅の本屋一階の店舗スペースの奥に位置する居間で、これでもかと大きな声を上げた。
学校から帰ってすぐのことである。
空の声の大きさにはとっくに慣れている両親は、大声にも驚いた様子は見せず、にこにことした笑顔を崩さなかった。
空の手には青色の携帯電話が握られている。先ほど父から渡された箱の中から出したばかりなので、ピカピカの新品だ。
とうに六十を過ぎた父が、好々爺ぜんとした顔をほころばせた。
「気に入ったかい。空は青が好きだと思ってその色にしたんだよ。最近の電話はすごいねぇ。父さんたちも携帯電話を買ったから電話番号を登録しておいたよ」
父に言われ、空は「すげーすげー」と連呼していた。そして、携帯を開いたり閉じたりとせわしなく動かしていた手を止めて、両親を見る。
「それにしても、何で急にケータイ買おうなんて思ったの?」
空は、可愛らしいとご近所でも評判の顔に、不思議そうな表情を見せる。
「そりゃ、あんた、最近物騒でしょ。公衆電話もその辺にないし、空、最近遊んでばっかりで帰ってくるの遅いしねぇ」
少し嫌みにも聞こえるようなことを言ったのは母である。こちらも六十歳をとうに超えている。細身の父とは違い、ふくよかな体型だ。思ったことを素直に口にする性格は、空とどこか似通っている。血はつながっていなくても、家族というのは似て来るものなかもしれない。
「そっかー、なるほどね。でも、スッゲー嬉しい。ありがとう! 父さん母さん」
にっこりと笑顔を向ける空に、両親は心の中で『ああ、可愛い』と思ったが口には出さなかった。出したら、とたんに空の機嫌を損ねてしまうことを知っているからだ。
「そうだ、空。写真撮らせておくれ」
父が不意にそんなことを言い出した。
何で急に写真? と思ったが、父が高齢者向けに販売されているタイプの、携帯電話を構えていることに気付き納得した。写メを撮りたいのだと。
「いいよ」
「あ、じゃあ母さんも」
空は、動かないようにじっとしたが、父と母が携帯電話を空に向けて構えながら、こうでもない、ああでもないと言い合っている。
「父さん、母さんまだ?」
いい加減痺れを切らした時、父が行くぞと声をかけた。どうやら、ようやくカメラモードになったらしい。
「はい、チーズ!」
パシャ
お決まりのシャッター音が鳴る。
空は父の携帯電話を覗き込んだ。
「すっげー。父さん。良く撮れてんじゃん」
父はそうだろうそうだろうと、自慢げである。
ちなみに母のはピンボケしていたため、空はこの後何度も何度も、撮影に付き合う羽目になったのだった。
end
はい、ということで。
今更にはなりますが、『三兄弟の事件簿2』の完結記念として募集しておりましたイラストをSSと合わせてご紹介させていただきました(*^_^*)
描いていただいたのは、つぐ未様でございます。
小説家になろう~秘密基地~ にて、描いてくださると声を上げて下さった方です。
ありがたや~。
本当に素敵なイラストですよねぇ。惚れ惚れします
もう、空ってば可愛い
つぐ未さまのイラストはとても暖かみがあって、癒し系ですよね
つぐ未さまからは、あと2枚イラストをいただけるかもと言うことで、とても楽しみにしております。
あ、でも、お忙しいようでしたら御無理はなさらないでくださいね。(ここで言ってもな)
つぐ未さま、本当に本当に、素敵なイラストをありがとうございました