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kinki kidsと板野友美ちゃんとリラックマが大好き(*^^)v
このブログでは、自作小説の創作話や自作イラストの公開をしています(^_-)-☆
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美月のお家へようこそ。日常のあれこれや、趣味の話。自作小説のこぼれ話&イラストをのせていきます。


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hite1.jpg










こちらのイラストに、平隊員TさまがなんとSSをつけてくださいました~!!
コメディーですよ~♪

本当にありがとうございます!!

では、さっそくどうぞです。


『生徒会 いん び~ち』


 青い空、青い海、白い砂浜。時期がやや外れてる事もあって、まるでプライベートビーチのような人気のない海岸、そこで俺は体育座りしている。
 なんで、こんなところにいんのかなあ、と。
 事の起こりは、ムードメーカー兼トラブルメーカーのあいつの一言から始まった。

※※※

「夏だ! 海だ! 高校生活最後の夏、海に行かなきゃだ!」
 ボーイッシュな茶の短髪を揺らしながらそう叫んだのは、生徒会書記、瀬名徹(せな とおる)。元気がいいというより、元気が有り余り過ぎて、ちょっと暑苦しい女子だ。
 徹の唐突な発言に、ああ、またこのかわいそうな子は面倒な事を言い始めましたよ、と思った。
 夏休みの合間にある登校日。生徒会役員は面白くもなんともない学校行事のスケジュール確認やらもろもろの確認事項に呼び出されて、それだけでも十二分に面倒で腹立たしいというのに。しかも顧問は役員会をサボる始末と来た。減給だよ、減給。いや、解雇だ。
 ちなみに今日集まってる生徒会は三年のみ。一年、二年にも一年会長、二年会長、一年書記、二年書記としっかりいるわけだが、どういう理由か今日は三年だけだ。腹立たしい。
 冷房が壊れて蒸し暑さが支配する、更にはその蒸し暑さによってイライラが充満する、更に加えて、徹のとんでも発言のお陰で妙な空気感が漂う中、知的な眼鏡がよく似合う生徒会を代表する会長、矢崎香世子(やさき かよこ)様がわざわざ挙手なさった。
 別に挙手しなくても勝手にしゃべればいいのに。
「カイチョー、どうぞ!」
「徹さん。海に行こうという事ですが、具体的にどちらの?」
 会長様、あまりの暑さに思考をやられたご様子。海に行く気満々です。
「待て会長。なんで海に行く方向で話を進める? ここは『はあ? あなたおバカさんですか? 海に行く暇がおありなら、休み明けの試験勉強でもなさったらいかが?』というべきところでしょ?」
 と、俺こと生徒会副会長の藤省吾(ふじ しょうご)は意見を述べてみたものの、なぜか会長様ったら悲しそうな顔で俺を見る。
「たまには海もいいじゃないですか。ダメですか?」
「そうだよ、ショーゴ! たまには海だよ! あと、山もいいよね!」
 山もいいよね!
 知らねえよ!
「生徒会の仕事もまだ残ってるし、そっちを先にやっつけませんか? 海に行くとか行かないとか、それは後でもいいでしょ」
「あれ、ショーゴ、なんか真面目クサイよ? どったの? 一夏の出来事があなたを大きく変えました? 宇宙人にさらわれて、怪しげな機械インプラントされた的な?」
 インプラントされた的な事があったら、俺はもっとあたふたしてると思う。
 こいつと話してると、俺もなんか面白い事で返さなきゃならんような、妙な使命感がウズいて良くない。
「とおるちゃんはあっちでおえかき帳におえかきでもしてなさい。俺は会長と生徒会の面倒事やっつけるから」
「えー、つまんないよー。あたしにもやっつけさせてよー。戦隊モノの暑苦しいノリで、悪者を完膚無きまでにやっつけさせてよー」
 駄々をこねる徹を見て、優しい会長様は資料の束を手渡す。
 会長が甘やかすから、徹の暴走も悪化の一途を辿ってる気がする。いや、実はそれを楽しんでるのかもしれない。生徒会の仕事って地味でつまんねえからな。徹のはちゃけっぷりが一服の清涼剤的な。毒薬的な。
「徹さんはこちらの資料をまとめて。私はこれをまとめるわね。省吾さんは……あっちでおえかき帳におえかきでも」
 あれ、デジャブ。
 俺って会長に嫌われてんのかな?

 その後、生徒会の仕事を終えると、会長と書記は本当に海に行く計画を立て始めた。わりとマジで。
 徹は普段こそテキトーな生き方をしてるやつだが、こと遊びの事になると別人のようになる。どっか遊びに行こうと言おうものなら、そこまでの最短経路を計算したり、この順路の方が費用が浮くとか、何時頃なら人が少なめとか、とにかく全力だ。
 小旅行に行くとか、有名なテーマパークに行くとか、そういった理由でならそのリサーチ力もまあ理解出来るわけだが。
「――ねえ、ショーゴ、聞いてんの?」
「ん? ああ、聞いてる。それって近場だろ? 確か電車で二駅の」
「そそ。ちっちゃい頃、よく行ったとこ」
 今更だが、徹とは幼稚園からの腐れ縁だ。家も近所で、子供の頃はよく遊んだもんだ。
 目を閉じれば今も思い出す。スピード違反を取り締まる警察車両に水風船を投げ付けたり、飲酒検問中の警察官に道端にいたカエルを投げ付けたり、見回り中のおまわりさんに……。こいつ、警察官に恨みでもあったのか?
 当時は笑って、いや、相手は笑ってはいなかったけど、まあ許される程度のおふざけだったが、後一歩で犯罪になりかねないぞ。
「今の時期はきっと人も少ないでしょうね。さながらプライベートビーチかもしれませんよ」
「いいね! 絶好のスイカ割りスポットだね!」
 どんなスポットだよ。
「スイカ割りってか、花火とかじゃないか?」
「ええー、線香?」
 なんで線香一択かな。
 派手なやつがいくらでもあるだろうに。
「では、スイカは私が用意します。お線香は省吾さんが用意して下さいね」
 なぜそこまでノリノリかな、この人は。
 てか、お線香って言ったよね? 線香“花火”じゃなくて、お線香? え、海で線香焚くの? あ、ちょっと風流かも。
「よーし、決まり! じゃあ明日の八時に駅前集合ね!」
「ええ、わかったわ」
「明日!? いやいや、いきなり過ぎだろ。予定とか聞けよ」
「予定? なにかあるの? 彼女もいないくせに」
 この子、むかつく。
 彼女いないとか、そこはグラスハートな俺にとっての超急所ポイントなわけだから、触れないでおくのが優しさだろ。
 しかもにやけ面で言われるとむかつき度十割増しだよ、ほんと。
「俺はいいんだよ。会長の事だよ。どっか出掛けたりとか、ないんですか?」
「私は大丈夫よ。兼部の合唱部のコンクールには爺やを立てるから」
 無理だよ、それは。
 爺や無理だよ。かわいそうだよ、あまりにも。
「じゃあ大丈夫だね」
 どこをどう取ったら大丈夫なんて言葉が飛び出すかな、この子は。
 三六○度、どの角度から見てもダメだろ。爺やNGだろ。まず顧問が許さないだろし、爺や声出ないだろ。おいくつの方かは存じませんが。
 という俺の意見なんぞ聞く耳も無く、明日、海に行く事になりました。
 爺や、がんばれ。俺、応援してるよ。

※※※

 とまあ、長い回想。
 そんなこんなで俺は、爺やの事を思いつつこうして砂浜で体育座りをしているわけだ。
 大丈夫かな、爺や。
「ショーゴ。なんでそんなとこで体育座りしてるの? 一緒に遊ぼうよ」
 そう声を掛けたのは、いつものセーラー服姿ではない、生意気にもビキニ水着姿の徹。色気出したい年頃なのか?
「浮き輪ってのは、なに。お前泳げない系?」
「泳げるよ。浮き上がらない系なだけだよ」
 それは俗に言うところの、水中で溺れる系だろ。
「会長は?」
「あっちでスイカ割りに夢中だよ。もうすごいよ。斬岩剣! とか言って、もう、物凄いよ! スイカ粉々だもん!」
 地球上の農家のみなさんと、地球上のスイカに今すぐ土下座で謝れ。額の皮膚が擦り剥けて血が流れるまで何度も謝れ。
 徹に連れられて会長の下へ向かってみれば、ああもう、なんと言いますか、スイカどこ? みたいな。砂浜がスイカ液で赤く染まって、ちょっとした事件現場だよこれは。家政婦が見たら、まあ、とか言ってられないような現場だよ。
「あら、省吾さん。あなたもやりますか? スイカはまだまだ沢山ありますよ」
sasie.jpg 血まみれ、もとい、スイカ液まみれの木刀を持った会長が指差した先には、山積みにされたスイカ。その傍らに立つバトラー服の白ヒゲ老人。って、爺やじゃね、あれ。コンクールに行ったんじゃなかったのかよ。
 しかし絵に描いたような執事だな。「セバスチャン」て感じだ。
 それはよしとして、会長の水着はどうだろう。スクールの水着ですか。なぜ?
「あの、会長。なぜに学校指定の水着を?」
「おかしいですか?」
「おかしくないですよー。似合ってます!」
 そうだな。徹の言う通り、ワンピースタイプはスレンダーなスタイルによく似合……。違う。
 会長は今更言う必要もないが、財閥のご令嬢だ。金持ちの感覚は庶民にはよくわからん。
「午後からどうします? スイカ割りますか?」
 一体何十個スイカ割るつもりかな、この人は。
「案外やる事ないですよね、海って」
「そのわりには夏になると凄い込むじゃない? あれってなんなのかな。バーゲンセールのノリ?」
 ある意味そうとも言える。その場の雰囲気を楽しむってやつだよな、きっと。
「ところで省吾さん。お線香は持って来ましたか?」
「まあ、一応」
 線香花火とお線香を。
 母親にお線香はないかと尋ねたら、え? どうしちゃったのこの子、みたいな顔をされた。ついでに言うと、そのあと母親は仏壇に手を合わせていた。
 俺がお線香を探すのは災厄の前触れか?
「あら、これは?」
「線香花火ですよ。知らないんですか?」
「ぱちぱちってなるんだよ。地味だけど綺麗だよね」
 ぱちぱちって、って小学生の感想かよ。もっとこう、なんかあんだろ。
 それにしても線香花火を知らないとは。いや、待て。て事は、本当にお線香の方を持ってくるように頼んだのか。
 俺はおもむろに線香花火の先端に、一緒に持ってきていたライターで火を付ける。ばちばちと、熱せられた木炭が爆(は)ぜるような音が小さく響く。
 陽はまだ高くて光は弱いけど、花火の音はなかなか良いもんだな、なんて。
 俺、年寄りクサイ?
「癒されますね」
「だねー。マイナスイオンだね、きっと」
 違うな、きっと。
「そうですね。マイナスイオンですよね、きっと」
 違うだろ? あれ、そうなのか?
 俺まで徹の毒に当てられそうだ。

 花火が終わると、辺りはやけに静まった。まるで、夏の終わりを告げるかのように。
「ショーゴ、泳ごうよ!」
「今からか? って、お前水中だと沈む系だろ」
「大丈夫だよ。浮き輪があれば遠泳も出来ちゃう系だから」
 強引に腕を組むと、徹はいきなり走り出した。一瞬つまずきそうになりながらも体勢を直し、その後を付いて走る。
 かなり強引ではあったけど、高校生活最後の夏。悪くない思い出だ。





どうでしたか~。とってもおもしろかったですよね^^ショーゴくんのツッコミがツボでした。徹ちゃんも可愛くてウキウキしながら拝読させてもらいました。会長さんがとってもいい味だしてます。会長さんと爺やがお気に入りです。お気づきかとは思いますが、せっかくなので、ラフ仕様ですが、会長さんも描いてみました。(時間がなかったのでババッとかいてしまいました)木刀をどういうわけか間違えてバッドを持たしてしまったので、急遽上から塗りつぶしました。なので、木刀に見えん!!しかも血まみれもとい、スイカ液にまみれにさすのを忘れていました(笑
爺やはきっとあのスイカの山のもっと右横にいると思われます。
あの位置だと、そのうちスイカ波に飲まれそうですよね(笑

平隊員Tさま~。素敵SSありがとうございました。へんな挿絵つけちゃってすみません。
ではでは今日はこの辺で^^

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と、思わず疑ってしまうほど、衝撃でした。

何の話かといいますと。つい先日、久し振りにメールチェックでもするかと、電子メールを開いたところ、アルファポリスさまからメールがきているではありませんか!

何事?!
と、思って開いたら。。。

webコンテンツPickUPで、紹介させてくださいというメールだったんです!

びっくりした。

最近伽砂杜さまの小説や、文樹妃さまの小説も紹介されていたあのコーナー。

以前、三兄弟の事件簿を紹介していただいたことがあったので、もうないだろうと思っていたのもあり、本当に驚きました。

しかも、コレを?! みたいな作品だったんです。

ringosama.jpg






この素敵なイラスト、覚えていらっしゃる方も多いと思います。
ほおずき林檎さまに描いていただいたこのイラスト。
このイラストの小説をというお話だったんです。

これ、16分くらいしかない二部構成の、短いお話で。しかも、、、ものっそい古い!
メールには気づいてすぐに返信したんですけど。大丈夫なのか、これ。と思って、見なおしてみました。

なんじゃこりゃ~

と、思わず叫んでしまうような、幼稚さ。。。
コレ、まずいでしょう。
と、いうことで今日ちょこちょこと書きなおしてきました。話の筋とかは一切触ってません。書きなおしたのは、地の文。ほぼ、〇〇はこう言った。言った。そう言った。という、言った言ったで、終わらせてるんですよ。私。
会話の多いお話ではありますが、これはひどいだろうと。この表現を削除したり、変えたりしたという。
短いお話なのでこの作業はすぐに終わりましたが。

と、言う訳で。

アルファポリスさまには25日に掲載されるとのことです。
よろしければ、覗いてやってくださいませ^^ジャンルは大衆娯楽です。

おっと。小説の題名を書き忘れておりました。


ある日の話


です。本当は長編小説として書きだした第一章と二章を一話二話に置きかけえたものです。気に入った作品だったので、こういうお話をいただけてすごく嬉しかったり。ありがたいことです。

さて、前記事でも書きましたとおり、現在7000ヒット御礼イラストのお題を募集中です。簡単なお題で結構ですので、皆様ふるってご参加くださいませ。お待ちしております。

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furiira3.jpg

こちらのイラスト。に、なんとなんと!!

文樹妃さまがSSをつけてくださいましたよ。

し、か、も!

文樹妃さま初のBでLな作品です。



ではでは、ごゆるりとお楽しみくださいませ~^^



羽ウサギと俺の夏。


 ※このSSは腐な女性がお好きなテイストかもしれません。苦手な方はご注意ください。




「夏だよねえ」

 突然背後から聞こえてきた声に、俺は漫画並みにコーヒーを吹いてしまった。
 っていっても、アイスだったから熱くなかったのが幸いだが――なんて、とりつくろってる場合じゃなくて。

「うんうん、セミも元気に鳴いてるし、猛暑はやだよ、本当。こんな日はクーラーがきいた部屋にいるのが一番だよね」

「おい、お前また――!」

 ガラステーブルの上に広がった黒い液体を慌てて拭きながら振り返り、俺は二度目の衝撃に言葉を失う。
 不法侵入によるものではなく、そこに見たものの異常さに、だ。

「はあい、尚吾。どう、可愛い?」

「なっ、なっ、なっ……何が可愛いだ、この変態!」
 
 俺は目の前のどこをどう見ても異常でしかない格好をした男に思いっきり叫んだ。
 
「変態とはひどいなあ。お洒落と言って、お洒落。尚吾が喜んでくれると思って、せっかく徹夜で手作りしたのに」

 頭にくっついている白いウサギ耳にしか見えないものをくいくいと引っ張って、俺にウインクをするこの男。
 昼夜を問わず勝手に俺の部屋に入り込み、勝手にくつろいで帰っていく――普通なら犯罪である行為を日常的に行っていても俺が警察に駆け込めないその憎たらしい理由とは、こいつがこのアパートの管理人であること、だけではない。

「そんなくだらないものを手作りすんな! 俺が喜ぶわけないだろ? それに何だよ、その変な浴衣――」

 しごく当たり前の俺のツッコミにもひるむことなく、ウサギ男は着ていた緑の浴衣を何のためらいもなくするりと脱いだのだ。

「じゃあ、これでどーお?」

「わっ、ばっ、馬鹿! さっさと服……! って、な、何だ。服着てたのかよ」

 浴衣の下にしっかりと履いていたらしい水色の涼しげなハーフパンツのゴムをいたずらっぽくパチンと引っ張り、ウサギは笑う。

「残念でしたー。いやあ、いくら尚吾とはそんな仲だとは言っても、真昼間からだなんて、兎羽、はずかしいもんっ!」

 身をくねらせて裸の上半身を両手で押さえてみせる兎羽――兎の羽と書いて「トウ」と読むアパート管理人、兼俺の二十年来の幼馴染の頬を、俺は思いっきり引っ張ってやった。

「おいおい、誰がそんな仲だ、誰が。人聞きの悪いこと言うんじゃねえ、この変態!」

「いだだだだ――可愛い顔がだいなしじゃんかっ! 尚吾のおバカ!」

 さすがに痛かったらしく、赤くなった両頬をさすりながら文句を言う兎羽だったが、それぐらいでひるむ俺ではない。
 っていうよりも、こんな変態を相手にしている場合ではないのだ。

「いいからさっさと帰れ! 仕事があるんだよっ、仕事が。期日は明日までなんだから、お前と遊んでる暇はないの!」

 ガラステーブルの上に広げてあった書類にコーヒーが飛ばなかったことに改めてほっとしつつ、俺は横に置いてあったメガネをかけて、兎羽を睨んだ。

「ほれ、集中するから帰れよ。お前だって管理人の仕事あるだろうが」

「ええーもっと尚吾いじって遊びたかったのに……」
 
 ご丁寧にもウサギ耳をくねくねさせながら兎羽は上目使いに俺を見る。
 
「そんな目で見ても可愛くねえから。ったく、腹減ってんなら冷蔵庫にあるもんテキトーに食っていいから、食ったら帰れよ」

 背を向けてそう言ってやると、仕方なさそうに兎羽は「ふわーい」とふざけた返事をしてキッチンへ向かった。足音でそれを確認した俺は、やっとほっと息をついて書類に目を走らせる。
 さっき書いた図面――今度のクライアントのための家の設計図だ。
 
 半分に減ってしまったコーヒーを飲みながら、もう一度最終チェックの作業に入った。
 今は全部パソコンでやっている作業だったが、どこか納得が行かない時だけ俺は手で図面を引く。
 そうすることでなぜかどこに違和感を感じるのか、何が足りないのかがわかる気がするのだ。

 家族が多いクライアントのために、部屋数や収納もできるだけ広くとり、子供たちのためのプレイスペースもあり、庭もある。要望にもきっちりと予算内で応えられた、と自分でも自信はある。
 けれど、何かが足りない――。
 それが何なのかがわからず、俺はため息をついてメガネをはずし、伸びをした。

 キッチンに目をやると、そこに兎羽の姿はなかった。
 先ほどまで何やら音を立てていたので、食事だけして、帰って行ったらしい。
 カウンターに置いてあるラップをかけた皿を見つけて、俺は目を瞠る。

 卵とハムのサンドイッチ――俺の好物だ。
 兎羽が作っておいていったに違いなく、気づけばちょうど空腹を訴えた腹をさすって、有難く頂戴することにした。

「ん、うまい」

 思わず声が出た。兎羽のやつは、実はきっちりと料理もこなすし、家事だって仕事だってちゃんとやる。
 雑然としていた部屋の中がいつの間にか整理されていることにも気づいて、なんだか変な気分で頭を掻く。

 そうだ。勝手に入り込んで、勝手にくつろいで帰っていくとはいえ、そういえばいつもこうやって、食事を作っておいたり、たまった洗い物や洗濯がやってあったり、家の中が片付いていたりする。
 実はあいつに助けられていることも、少なくなかったり――。

「ちょっと言い過ぎたかな」

 変態、といつもながらに罵って追い返したことにほんの少し罪悪感のようなものを感じかけ、俺は急いで頭を振った。
 いやいやいや、全部あいつが勝手にやってることで、俺が頼んだわけでもない。
 しかも言葉の通りあいつは変態で、いつも変なコスプレとやらをして、俺の都合などかまいもせず勝手にやってくるんだ。
 それだけではなく、本当の意味で「普通(ノーマル)」だとは言えないあいつの嗜好を俺は知っていた。

 小学校の頃から知っていた兎羽は、ずっと普通の友達だった。
 今みたいに変な格好なんかもちろんすることもなく、俺に冗談めかして迫ってきたりもしなかった。
 彼女だっていたし、どっちかと言えばもてるほうでとっかえひっかえ――当時は俺が注意したりもした。
 本気で付き合ってんのかって。
 その時、兎羽は予想外に傷ついた目をして、俺をじっと見つめた。
 どうも今から思えばあの瞬間、兎羽は本当の自分を俺に明かすべきなのか、迷っていたのかもしれない。

 中学を卒業して、兎羽の両親が離婚した時、一人っ子であるあいつはそのどちらにもついていかずに、全寮制の高校に進んだ。 
 普通の公立に入学した俺は、それから随分長い間、兎羽と会うことはなかった。
 そう、このアパートに入居するまで。

 まさに鳩が豆鉄砲くらったような顔だったかもしれない。
 再会した兎羽は、もう今のあいつだった――いつでも怪しいファッションに身を包み、自分の嗜好を隠そうとしない、同性愛者。
 俺だとわかった時の衝撃はあいつだって相当だったようだけれど、結局のところ、兎羽は兎羽だってわかったし、別に個人の自由だと思ったから、変わらず付き合うことにした。
 そのことに感激したのか、何なのか、兎羽はその日からこうして俺の部屋に入り浸るようになったのだ。

 あいつのプライベートには干渉しないでいるんだけど、どうも友達が少ないわけでもないし、なんでやってくるのかなんてわからない。
 ただの暇つぶしなのか、面白がっているのか――いつも笑ってくっついてくる兎羽に、ノーマルである俺は正直逃げ腰でいるわけだが、冗談なのはわかっているから、結局こうやって幼馴染を続けているのだった。

「ふう、うまかった。っていうかいいかげん終わらせねえと――わっ、もうこんな時間かよ」

 午後も遅く、日が傾いているのが見えて、俺は慌てて立ち上がった。
 一人暮らしの空しい習慣から、俺は洗濯物を取り込みに行こうとベッドの横を通り過ぎかけ、布団の中のふくらみに気づいた。
 そこには、夏用とはいえ厚い布団にくるりと巻かれるようになって、寝ている兎羽がいたのだ。

「なんだ、帰ったんじゃないのか……」

 思わず眉を寄せ、ぼやくも、あまりにすやすやと気持ちよさそうに寝ている顔を見たら起こす気にもなれず、そのままほっておくことにした。そしてベランダに向かいかけた足を止め、俺はソファに戻った。
 人の部屋でまた勝手にくつろいだ対価として、洗濯物は兎羽に取り込んでもらうことにしよう。
 なんだかんだ言ってあいつがやったほうが、綺麗にたたんでくれるしな。

 心の中で舌を出し、俺は目を閉じた兎羽を見下ろす。
 その顔は女とも思えるぐらいに綺麗で、整っていて――俺はなんだかおかしな気分だった。
 兎羽がもしも女だったら、こいつと付き合ってもよかったのに――。

「ってわーっ、お、俺、何を考えてんだ、何を! 仕事しろ、仕事!!」

 突然沸いた妄想を頭から振り払い、俺はまたメガネをかけ、書類に向き合うことにした。
 
「ううん……尚吾」

 その時、ベッドの中から甘い声で呼ばれて、俺は危うく飲みかけたコーヒーをまた吹くところだった。
 振り返ったら、ちょうど兎羽は寝返りを打ったところで、布団がはがれた素肌の背中が覗いていた。
 クーラーの風がちょうど当たることがなんだか気になって、俺は立ち上がる。
 布団をかけなおそうとしたら、兎羽は子供のように丸まったまま、またもごもごと何かを呟いた。

「……寂しいよ」

 ちょうど聞き取ろうと耳を寄せたところに呟かれて、俺は思わず兎羽を見つめる。
 そのあどけない寝顔は、今の兎羽ではなく、あの頃の幼い顔に似ていた。
 両親が離婚した理由も聞いてはいなかったけれど、もしかしたらこいつのこともあったのかな。
 そんな風に考えると、なんとなく胸が痛んだ。
 いつも明るくへらへら笑っている兎羽。
 でももしかしたらその胸には大きな傷があって、いまだに寂しさが抜けないのかも――。

 なんだか複雑な気持ちで布団をかけてやると、兎羽は心なしか悲しげだった表情をゆるませ、安心したように寝息を立て始めた。
 ――まあ、いいか。こうして入り浸るくらい。
 別に今彼女がいるわけでもないし、ほとんど自宅で仕事をしてる俺にとって、困ることもない。
 
 優しい気持ちになって、仕事を始める。
 そして思い浮かんだアイデアに、俺は設計図を置き、パソコンに向かった。
 足りない部分さえわかれば、あとはすぐに直せるのだ。
 集中して作業を進めて、いつしか部屋も薄暗くなった時、急に部屋の明かりがついて、俺は目を瞬かせた。
 
「おはよん、尚吾」

 いたずらっぽい笑顔で書斎の入り口に立っていた兎羽の姿に俺は更に目を見開いた。
 だってそこにはさっきまでの変なウサギ耳やら、浴衣やらとは完全に違う、スーツ姿の大人がいたからだ。

「今からちょっとヤボ用でね、仕方なく。夜ご飯作っといたから食べてよ。じゃあ、俺、行くね」

 仕事モードの兎羽は前にも見たことがあるのだが、どうにも調子が狂う。
 っていうか、スーツまで持ってきてたのかよ、まったく。

 兎羽はそんな俺の心のぼやきには気づくこともなく、髪まできちんと整えて玄関へ歩いていく。

「ああ、行ってらっしゃい」

 危うく出てしまった言葉に、兎羽はにやにやと笑う。

「行ってくるよー尚吾。もう、なんだかんだ言って、ちゃーんとここ、俺のスイートホームだってわかってくれてるんじゃん、尚吾ってば!」

 ふざけた言い方だけど本当に嬉しそうな兎羽に、俺は「馬鹿、何言ってんだ」とか「言葉のアヤだ」とか言い返してはいたけれど、そんなに腹を立ててはいなかった。
 キッチンから美味しそうなカレーの匂いがしていたし、ちらっと見たリビングに畳んだ洗濯物が置いてあるのも見えたからだ。それに何より――。

 先ほどの兎羽の寝言を思い出してぼんやりした瞬間、「尚吾」と呼ばれ、顔を上げる。
 瞬間、やわらかい感触が当たった場所は――俺の唇。
 兎羽の顔が離れて、すばやく笑ったいたずらっぽい瞳に、俺は驚きから解放されるやいなや、思いっきり叫んだ。

「とっ、兎羽ーっ!!」

「へへん、ぼーっとしてるから悪いんだよーだ。ゴチソウサマ」

 ハートマークまでついてそうな嬉しそうな声音で言われて、俺は鼻息も荒く盛大に兎羽を追いかける。
 アパートの廊下をエレベーターまで走りながら、兎羽は手を振る。

「待て、この変態野郎――!!」

 捕まえてどうする、というわけでもないけれど、とにかく俺は走った。
 そうでもしないと、妙にドキドキしている自分の心臓を許せない気がしたから。

 兎羽はウサギのごとく軽やかに駆けていく。
 忘れ去られた自宅の書斎で、プリンターから静かに印刷されている紙のことなどすっかり忘れて、俺は夢中でその背中を追いかけた。

 家族が集まるリビングをもう少し広くとり、キッチンをオープンにした、新しい設計図。
 兎羽が見たら、どう思うだろう。
 なんて頭の端で考えながら。




 END


*********

いかがでございましたでしょうか?

この調子で、尚吾が兎羽のペースにはまってオチていくのかなぁとか妄想したくなりますよね。

兎羽が可愛いです。尚吾と早くくっついてもらいたいです^^

文樹妃さま。
ステキなSSを本当にありがとうございました。
コラボ第二弾ですね^^すっごく嬉しいです

こんな素敵なSSを書いてくださった文樹妃さまのブログは、下のURLからGOですぞ。

文樹妃の独り言。  
http://munjuhee.blog.shinobi.jp/
 

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いや~、なんかご無沙汰な気がします。

今日、久し振りにパソをネットにつなげようとしたら、つながらなかったんです。
めちゃんこあせりましたよ。しなきゃならないことがあるのに~! みたいな。

ヘルプをみると、モデムがどうやらおかしいらしい。電源を切って、とかなんとか書いてあるのでその通りにしようと思ったら。。。

モデムに似たようなものが4つもある!! どれがモデム? と思って。。。取り合えず全部電源落としました(笑

すると、こんどは。。。無線LANがおかしくなった(Boo
とりあえず、線つないでみたら、ネットにはつながったので一安心。でも、無線が。。。いろいろとやってみた結果、セキュリティーをオフにして、モデムとつないでいる線を引っこ抜いてまた突き刺し。

すると。お、お、お! つながった~!!!

いや、本当にほっとした。このままネットにつながらなかったらどうしようかと思った。

と、いうわけで。無事にブログ書いてます。

更新していない間何をしていたかというと、小説書いてました。
とある方にお誘いいただいて恋愛ものを。(お名前出していいか分からないので伏せてみました)

12000文字以内にするために、めちゃくちゃ消しました。本当にいっぱい消しました(泣
どうしよう分かりにくくなってたらと不安で仕方ありません(汗

まあ、短い分すぐに読めると思います。

題名は

でも、恋してる。

お察しの通りベタです。
年の差もの? なんとなく書いてみたくなったんですよね。三角関係は描いたことあるし、中学生の恋も書いたことあるし。前回の春花企画でラブコメっぽいのにも挑戦したし。
ってことで、年の差もの。でも、8つですけど。

今回のお話。18日までに仕上げたかったというのもあり、既存小説のキャラクターを使いまわしちゃいました。
主役の二人ではないですよ。きっと、誰も知らないからいいかと思って。(コラコラ
このキャラクターの内の一人(あ、二人なんです)は、他作品にも使いまわしているという。便利キャラ(笑
あっちこっちで顔を出しています。

分かったあなたはすごい(笑

実は、こう言うのやってみたくて、ほら、狩谷警部みたいな(漢字あってたっけ)。
三兄弟を書いていた時は、私市をそういうキャラにしようと思っていたのに、意外に警察の出番がなかったという。予期せぬ人物がいっぱい使いまわされています^^;(あ、三兄弟を読んだことがある人しかわからないですねすみません。

よし、あとはシャッフル企画の作品を読みに行こう。時間ができたらになりますけども。

ああ、いろいろ書きたいことあったんですけど、今日はもうこの辺で。
アデュー!!

拍手[0回]

+プラス探偵事務所

やっとこさ、完結させました。昨日のことです。

全部で14章プラス、プロローグとエピローグなので、16話かな? それにいただいたキャラクター設定&あとがきが入ってます。

長いよ。しかも変な話だよ。へへへ。
(読了時間はキャラ設定あとがき含め約82分です)

ああ、高田さまには申し訳ありませんとしか言えないですが。申し訳ありません。

では、続きに小説語りをば。
ちょっと解説チックなことをしようかな。しない方がいいかな。

見たい方だけどうぞ。

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